開発スタッフインタビュー第九回:高丘駒祐篇(二)


ディアナ ……なんぞ頭痛がひどい上に吐き気がおさまらん。
鵲 お見事な二日酔いでございます。
しかしそこは「吐き気がモラホラおさまらねえ」にして頂きたCARCASS。
ディアナ 相変わらず何を云うとるか分からんが、糾す気力も涌かぬわ……。
尚、今回、固有名詞が飛び交うのでいつか注釈がつくかもしれぬが、つかぬかもしれぬ。
そんな感じでよろしゅう頼む。

こま こんにちは。今日もよろしくお願いします。
鵲 よろしくお願いします。
ディアナ 前回は月臥丘書寮結成までの話じゃったな。今回は高丘駒祐自身に焦点をあてていこうかの。
鵲 さて、前回の結成以前の話でありました通り、こまさんと言えばメタリック書痴なわけですが。
こま すげー呼称(笑) 中途半端でお恥ずかしい限りです。
鵲 書寮メンバーへのメタル浸透度の高さは、ひとえに「デスメタル先輩」こと高丘さんの影響だと思いますが、昔からずーっとメタルだったんでしょうか?
こま メタルと云うか、洋楽派でしたね。これは本もそうなんですけど、高校3年の時にディスカバージャパンするまで、音楽は洋楽、本は翻訳か原典しか読まない主義でした。
鵲 音楽そのものはいつ頃に何から入りました?
こま 小学生の頃にオフクロが EAGLES とか CARPENTERS を聴いてて、あと、叔母から PINK FLOYD、叔父から KING CRIMSON を聴かされましたが、当時はジャケが怖くてイヤでイヤで(笑)
鵲 「歯医者行くのヤダー!」ジャケですね。
こま オレの周りでは「よ、呼んだ?」ジャケと云ってましたが(笑)
ディアナ 全く意味不明じゃ。
こま 自主的に聴いたのは MR. MISTER の "Kyrie" ですね。
鵲 後のマステロットである。
こま そう、よく考えるとこれも CRIMSON 人脈ですね。
あと、レンタルレコード屋の店頭で Cyndi Lauper の等身大ポップを視て、なんて美人なんだろうと(笑)
後で年齢を知ってびっくりしましたが、Cyndi Lauper もよく聴きました。
鵲 丁度ブームでしたね。グーニーズやらダンステリアやら。
こま そうですね。メタルを最初に聴いたのは多分その後くらいで、おそらく Live Aid に日本代表で参加してた LOUDNESS を観たのがはじめてだと思います。
鵲 かーがーみーよーかーがーみー…
こま で、しばらく洋楽を色々聴いていて、中学3年の時のクラスに一大メタルブームが来たんです。
当時CBSソニー出版の偉いさんの息子が同級生で、彼が音楽の時間に DEEP PURPLE の "Burn" のキーボードソロをオルガンで弾いたのがきっかけでした。
鵲 オールアーイヒーーーーァ!
こま 燃えろ~!
鵲 王様か Σ(°д°)
こま 目黒の人でしたよね。まだ住んでるんですかね。
ディアナ 相変わらず楽しそうじゃな其の方ら。
鵲 ではその頃にバンドも?
こま やろうとしたんですけど、受験直前の時期に学校にギター持ち込んでたのがばれて、受験が終るまで没収されて、バンドは出来ませんでした。
鵲 絶望した! 受験成績の悪化を懸念する教師に絶望した!
こま で、ちょっと戻りますけど、DEEP PURPLE で目覚めたみんなは当時全盛だった LA Metal やグラムロック、それから Bon Jovi や EUROPE、Ozzy の方へ向かったんですけど、オレは "Burn" の BPM の速さが好きだったんで、IRON MAIDEN の "Aces High" やYngwie Malmsteen の "Rising Force" なんかにどっぷりハマって。
鵲 BPMの速さつながりでスラッシーな方に行ったんでしょうか。
こま 一度 HELLOWEEN とかメロディアスなジャーマン=メタルの方にいったんですけど、何か違うなと思って。そうこうしてるうちに高校に入学したら、家に500枚レコードがあるっていうヤツがいたんですよ。
で、「速いのを貸してくれ」っていったら、50枚くらい貸してくれて、その中に SLAYER の "Reign in Blood" があったのが人生を決めました(笑)
鵲 ドゥユワナダーイ!!
ディアナ 何を云う。妾はまだ死にとうないぞ。
鵲 いやそうじゃなくてですね・・・痛い、髭をひっぱらないで!
こま (スルーして) 次の日は学校をさぼって雨戸も開けずに一日中聴いてました。
鵲 あとは四天王へ?(髭をさすりながら)
こま ANTHRAX や TESTAMENT はすぐに聴いたんですけど、METALLICA は最初はあんまり興味涌かなくて。
でも、ピュアロック(当時やってた深夜番組)で Monsters of Rock の様子がちょっと流れて、風に長髪をなびかせながらクリームホワイトの Explorer を抱えて "Master!" と叫ぶ James にガツンとやられて。
高校2年の時に代々木でライヴを観てからは完全にオレにとっては神でした。
鵲 一番よかった時期のMETALLICAですね…。
こま 後は月に一回、貯めたお金を握り締めて西新宿に行って、電車賃がなくなるまでレコード/CDを買うという生活を何年も続けてました。
鵲 90年代になって丁度Death metalが浸透してきた時期ですね。
こま 最初の黄金期ですかね。DEATH、CYNIC、DEICIDE、MORBID ANGEL、CARCASS なんかがメジャーに活躍してて。オレはもっぱら SUFFOCATION を聴いてましたが、当時のバンドメンバーと Florida の Morrisound スタジオに行った時は Scott Burns に会えなくて残念でした。
鵲 バンドを本格的にはじめたのもその頃ですか?
こま そうです。丁度、デモを作って都内のライヴハウスに持ち込んでた時期ですね。
鵲 そのバンドの活動が一段落して、前回にあったような流れになったと。
こま そうです。そのバンド結成から前回の経緯に至るまではほんとにそのバンドのことしかやってませんでした。
鵲 今現在聞く音楽、となると?
こま もっと狭くなって(笑) US系 Brutal Death Metal と Slamming なやつ主体ですね。
GORATORY、CEPHALOTRIPSY、GUTROT、CUMBEAST なんかを最近は繰り返し聴いてます。
ディアナ 何やら高木の小娘も似たようなことを申しておったのう。
こま 彼女には深い業を背負わせてしまいました(笑)
対照的に、SOL くんやお春さんのようなバランスの取れた聞き手として姫を設定してます。
鵲 本篇で彼女も語ってますが、Brutal Slam の魅力ってなんでしょうね?
こま 某Disk Hellのコメントじゃないですけど「これは酷い! 酷すぎる!!」っていう感動ですかね。
ディアナ なんじゃ、それは。
こま ちょっと真面目に語ると、Inhumanity を追求するという、Humanity に満ち溢れた意志の下に、悪ふざけを一所懸命にやるという、迸る悪意に惹かれます。
超人的な練習を必要とするフレーズを奏でながら、ポルノやゴアについて叫ぶという醜悪なユーモアが、とても人間らしくて好きです。
鵲 韜晦というか偽悪というか。本気でバカをやって価値観を認められるのは人間だけですからね。
こま メタルっていうのはフィギュアスケートに似てると思うんです。
純粋に音楽性の面も勿論重要ですけど、顔が怖いとか、声がまるで豚とか、テクニックとか、あるいは主張とか、アトモスフィアとか、そういったものも無視出来ない重要な要素だと思います。芸術点と技術点と云うか。
鵲 プラトンじゃないですが「情熱」と「理性」両方あってこそ人間ですからね。
こま 自分も思い込みに左右されるので、そこにあるものを素直に受け止められるよう精進したいと思います。
鵲 さて、もうひとつの軸、書物の方を伺いましょう。
本を読むようになった切欠というか、readerとしてのdigestのようなものを。
こま 基本的に本が嫌いな子供で漫画ばかり読んでましたね。
オールドスクールSFへの憧憬みたいなものは多分藤子・F・不二雄先生の作品の影響かと。
小学生時代に喜んで読んだ本は加納一朗先生の荒馬・是馬シリーズだけですが、これもSFですね。
鵲 漫画先行なのがちょっと意外な感じですね。藤子F先生の作品で特にお好きなのは?
こま 短編SFは好きな作品が多くて選べないんですが、連載作品では「T・P(タイムパトロール)ぼん」の、特にリームが登場してる頃が好きです。
鵲 F先生作品の中でも特に年齢高めの層に向けた作品でしたよね。リームはロングヘアでしたし。
こま ディアナさんの銀髪も長くて綺麗ですよね。
ディアナ ふふん、そちも少しはものが分かっておるようじゃのう。
鵲 活字に覚醒された切欠は?
こま 高校時代に肺炎で入院して、余りに暇なんで買ったのがP.K.ディックの「模造記憶」「悪夢機械」で、それからしばらく浅倉久志さん訳の早川の文庫を読み漁りました。
鵲 ヴォネガットとか。
こま いや、どうもオレはジャンルで読めないみたいで、作家さん或いは翻訳家の方で絞ってしか読めないんですね。だから、当時は他にオレでも読めるものがないか探ってる時で、キングやクーンツみたいな、エンタテインメント性の高い作品を読み漁りましたね。
鵲 ではSF方面には行かなかったんですか?
こま 正統派SFで熱心に読んだのはディック、クラークくらいなんですけど、サイバーパンクにはどっぷり浸かりました。
色々模索してるときに、「ログイン」の水玉螢之丞さんのコラムの上にあった書評で、ギブスンの「モナリザ・オーヴァドライヴ」が取り上げられてて、そのジャケのかっこよさと語感に刺激されて買って読んだんですよ。
スプロール三部作を、第三作目から読んだ(笑) で、どハマリました。
鵲 確かに本篇の大ラスはサイバーパンク、特にギブスンの影響を感じます。
ディアナ げーむをぷれいしてのお楽しみ、なのじゃ。
こま そこから、黒丸尚先生の訳を中心に、スターリングやラッカーをはじめ、未邦訳のものも含めてサイバーパンク一筋に染まりました。
鵲 折しも「攻殻機動隊」やら「AKIRA」やらで、世にサイバーパンクが認知されてきた頃でしたね。
こま そうですね。「情報の海」という言葉が、とてつもなくかっこいい響きを持っていた時代でした。
鵲 非西洋的な意味で哲学的な面を含むのがサイバーパンクだと思います。
形而上の方面に関しては如何でしょう。本篇執筆の動機に直結すると思うのですが。
こま そっちの方面は祖父の影響で中学の頃から本は読まされてたんですけど、自分から勉強したのはかなり遅くなってからですね。むしろオカルティズム的な興味の方が先立っていて、中学生の時に読んだ諸星大二郎先生の「暗黒神話」「孔子暗黒伝」で闇の入り口が開かれてしまったという。
鵲 そしてラーメン屋の名前があぁなる、と(笑)
こま そうそう。それを指摘してくれたのは鵲さんが第一号です(笑)
鵲 多分士狼さんは「泰山は崩れんか!」とか叫びながら「ひげひげ」のラーメンにKOされていたんだろうと信じています(笑)
こま 「哲人は死なんか!」ですね(笑) 燃えますよね、あれ。
鵲 諸星大二郎入りで原典・原著を漁るようになって、オカルティズムに至った感じなんでしょうか?
こま 何かの後書きで諸星先生が「ホラーはラヴクラフトの影響を受けて……」と書かれていたので、ちょうど大瀧啓裕先生監修の「ラヴクラフト全集」が創元から出はじめた頃だったので、むさぼるように読みました。あと、青心社の「クトゥルー(暗黒神話大系シリーズ)」ですね。
鵲 死ぬまでに一度は聞きたいですよね、エーリッヒ・ツァンのプレイ。聞いたら死にそうですが。
こま MEKONG DELTA のアルバムにありますけどね(笑)
これはオカルトと云うかホラーですね。ただ、自分は宇宙的恐怖(コズミック=ホラー)から、虚無思想というか、宇宙に意味なし的無常観というか、そういう思想が育まれたと思っています。
鵲 そういった非コスモス的な価値観があるからこそ殉教地を作れたように思いますね。
こま そういってもらえるのは嬉しいですね。オレの無常観というのはこれも漫画ルーツですが、小学生時代に「デビルマン」と「マーズ」を立て続けに読んで、「人間は滅ぶべきだ」と強く刷り込まれて(笑)
当時Sくんという友達と二人で漫画雑誌もどきのようなものを作ってたんですが、いつもSくんに怒られるんですよ、「お前の描く漫画は必ず世界が滅ぶ」と(笑)
中学生時代に確認したんですけど、その頃描いた11本の漫画全てで世界が滅んでました(笑)
鵲 限界まで突き放した無常観(笑)
こま だから、オレは「宇宙的恐怖」は好きだけれど、ヒロイックな要素が付け加わった「クトゥルー神話」は余り好きじゃないんです。 日本では小林泰三先生がコズミック=ホラーを書かれてますよね。
鵲 善悪持ち込んでどうする、という世界ですね。
小林先生は英訳されればラムレイ以上の評価が付くと思うんですが・・・
こま HPL本人以外の作品では、実はヘイゼル=ヒールドの「博物館の恐怖」がかなり好きなんです。
チャウグナル=ファウグンがなんか可愛らしくて(笑)
鵲 萌えですか・・・?(笑)
こま 萌えって云うんですかね(笑)
コズミック=ホラーでは無いですが、石黒達昌先生のSF作品も、何処と無く手触りと悪意(笑)が小林泰三先生と共通するような気がして好きです。
鵲 「雪女」「人喰い病」とかいいですよね。世間的には芥川賞候補作家として有名なのかもしれません。
こま あとやはりオカルトの側面では、カッバーラなんかの実践主義的教本も読みましたが、澁澤龍彦先生の文学的オカルティズムにはかなり強い影響を受けていると自分では思ってます。
作品に顕れているかは微妙ですが(苦笑)
鵲 グリモアを楽しんで読める人にこそ本篇はお奨めですね。
こま 正面から魔術的なものは扱っていませんが、非日常要素にはなるべく原典のあるものを盛り込むようにしているので、色々なところでニヤリとして頂ければ本望です。
鵲 殉教地も「伝奇」のイメージとして作られたんでしょうか?
こま 田中啓文先生の「禍記(マガツフミ)」後書きにある「伝奇原理主義」から云うとあてはまらないですね。
元々自分には伝奇は書けないという思いもあって、オカルトパンクという造語を作ってジャンルとしています。
個人的にはネタバレも含めて「オカルトパンクSF」というのが一番しっくり来ますね。
「殉教地」は基本的には「ボーイミーツガール featuring オカルティズム including SF」だと思ってます。
鵲 骨格は古き良き時代の熱血少年漫画で、血肉に恋愛、頭脳にペダンティック(衒学的)な成分が入ってるイメージでしたね。
こま それはとても嬉しい表現です。最初にメンバーと話していたのも「二人は結ばれましためでたしめでたし、以降までも全部書く少年漫画をやろう」と云うことだったので。
鵲 ヒーローとヒロインがキスをして画面暗転・・・にならずに、その後何が起こるかも含めて描くということですよね。
今後のシナリオで、士狼がどんな成長をしてどんな結末を迎えるのか、楽しみにさせてもらいます。
こま 頑張ります。
ディアナ と本篇に話が戻って来たところで、今回は終ろうかのう。
鵲 もうそんな時間ですか。 どうもどうもお疲れ様でした。
こま お疲れ様でした。

ディアナ 次回はいんたびゅうもついに最終回。
本篇制作の裏話や隠された秘密に迫るでのう。刮目して待たれよ!
鵲 ザッカッコッデモーン!!
皇杏姫SOL セデスポザカコデモーン!!
ディアナ ……誰ぞ、妾を助けてたも。

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